となりの専務さん
「じゃあ石川さん、ここ座って」

「え、ここ……ですか?」


……そういえば、専務の部屋に初めてあがった時から、実は気になっていたことがあった。

同じアパートのとなり同士の部屋。当然、部屋の造りはほぼ同じだ。

置いてある家具も同じようなものが多かった。本棚とか、テーブルとか。クローゼットがない造りになってるから衣装ケースとか。

でも、専務の部屋にはひとつだけ、男性の部屋にしては異色とも言えるものが置いてあった。


……キレイで大きめの、鏡台。


その前に置かれている、背もたれのついている木製のチェアーに座るように促された。



「……この鏡台、なんですか?」

チェアーにゆっくりと腰をおろしながら、私は専務に聞いた。


「男の部屋にこんな鏡台があったら、気持ち悪い?」

「い、いえ! そんなことは!」

「石川さんはどこで化粧してるの?」

「洗面所の鏡の前で……。私も鏡台欲しいですけど、このアパートの部屋に置くと狭くなりそうで……」

「そうだね。実際狭いし」

「じゃあどうして……? それに、男性の部屋に鏡台っていらないと思うのですが……」

アンティーク調の、真っ白でキレイな鏡台。引き出しもたくさんついていて、とても便利そう……というか、高級そう。
鏡台の上にはなにも乗っていなくて、傷みもないし、とくに使いこまれている感じもない。

でもその割には、鏡はとてもキレイに磨かれていて、毎日こまめに磨いてるのかなと思った。
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