となりの専務さん
すると専務は、私に鏡の方を向くように指示した。
よくわからなかったけど、私は専務に背を向け、言われた通りに鏡を見つめた。
髪をキレイにセットしてもらい、いつもよりかわいい洋服に身をまとった自分。いつも見慣れているはずの自分が、少しだけいつもの自分じゃないような気がして、ちょっと気恥ずかしい気持ちになった。
でも。
すぐに目を逸らした。
結局は自分だ。
べつに、自分のことが嫌いなわけじゃない。
でも今は少し、自信がなくなっている。ダサくて、恋愛のことに疎くて、先輩にも嫌われて、お金もなくて。
それでも、がんばろうと思ってはいるけど、今は、自分自身の味方になれそうになくて。
すると専務は。
「……俺はさ」
私は、鏡台に映る専務の顔を見つめた。専務も、私のすぐ後ろで鏡台越しに私を見ていた。
「……俺はさ、父親の言われた通りに生きてる毎日に嫌気が差して、家を出て、こんなアパートに暮らしてるわけだけど。でも、うちの会社の仕事が嫌いなわけではないんだよ」
「え?」
「化粧品会社での仕事は、とても好きだよ」
言いながら、専務は私の髪をさらりと撫でた。
くすぐったくて、でも気持ちよかった。
「女性が、化粧品でキレイな姿に変わっていくのを見るのが好きだ。もちろんうちは男性用の商品も扱っているけど、とくに女性の変化を見るのが好きだ」
鏡越しに見る専務の表情は、わかりにくくはあるけど、でも普段よりどこか生き生きしていた。少なくとも、普段の無表情ではなかった。
よくわからなかったけど、私は専務に背を向け、言われた通りに鏡を見つめた。
髪をキレイにセットしてもらい、いつもよりかわいい洋服に身をまとった自分。いつも見慣れているはずの自分が、少しだけいつもの自分じゃないような気がして、ちょっと気恥ずかしい気持ちになった。
でも。
すぐに目を逸らした。
結局は自分だ。
べつに、自分のことが嫌いなわけじゃない。
でも今は少し、自信がなくなっている。ダサくて、恋愛のことに疎くて、先輩にも嫌われて、お金もなくて。
それでも、がんばろうと思ってはいるけど、今は、自分自身の味方になれそうになくて。
すると専務は。
「……俺はさ」
私は、鏡台に映る専務の顔を見つめた。専務も、私のすぐ後ろで鏡台越しに私を見ていた。
「……俺はさ、父親の言われた通りに生きてる毎日に嫌気が差して、家を出て、こんなアパートに暮らしてるわけだけど。でも、うちの会社の仕事が嫌いなわけではないんだよ」
「え?」
「化粧品会社での仕事は、とても好きだよ」
言いながら、専務は私の髪をさらりと撫でた。
くすぐったくて、でも気持ちよかった。
「女性が、化粧品でキレイな姿に変わっていくのを見るのが好きだ。もちろんうちは男性用の商品も扱っているけど、とくに女性の変化を見るのが好きだ」
鏡越しに見る専務の表情は、わかりにくくはあるけど、でも普段よりどこか生き生きしていた。少なくとも、普段の無表情ではなかった。