となりの専務さん
「話の腰を折ってしまってすみません。お母さんは、お姉さんにどんな話をしたんですか?」
話の続きが気になって、専務にそう聞くと。
「メイクしてみようか、って。ただそれだけ」
「メイク、ですか……?」
なんだろう。どういう意味だろう。諭すような、深い話をしたのかと思った。
「うちは父親が化粧品会社の社長だからね。化粧品は手元にたくさんあったよ。
でも、姉がそれに手をつけたことはそれまで一度もなかった。たぶん、自分に自信がなくて、メイクしたところでなにも変わらないと思ってたんだろうね。肌も弱かったから、化粧品とか使いたくなかったっていうのもあったと思う」
「はい」
「でも、母が姉をなんとか説得して。一度でいいからって、母が姉をメイクしたんだ。……この鏡台で」
懐かしそうな、でもやさしい瞳で鏡台を見つめ、そしてそれをそっと撫でながら、専務は言った。
「そうなんですね……。メイクをして、お姉さんはどうでしたか……?」
私がそう聞くと、専務は一層やさしい表情になり。
「今でもはっきり覚えてる。とてもキレイだったよ」
と、答えた……。
話の続きが気になって、専務にそう聞くと。
「メイクしてみようか、って。ただそれだけ」
「メイク、ですか……?」
なんだろう。どういう意味だろう。諭すような、深い話をしたのかと思った。
「うちは父親が化粧品会社の社長だからね。化粧品は手元にたくさんあったよ。
でも、姉がそれに手をつけたことはそれまで一度もなかった。たぶん、自分に自信がなくて、メイクしたところでなにも変わらないと思ってたんだろうね。肌も弱かったから、化粧品とか使いたくなかったっていうのもあったと思う」
「はい」
「でも、母が姉をなんとか説得して。一度でいいからって、母が姉をメイクしたんだ。……この鏡台で」
懐かしそうな、でもやさしい瞳で鏡台を見つめ、そしてそれをそっと撫でながら、専務は言った。
「そうなんですね……。メイクをして、お姉さんはどうでしたか……?」
私がそう聞くと、専務は一層やさしい表情になり。
「今でもはっきり覚えてる。とてもキレイだったよ」
と、答えた……。