となりの専務さん
その後、お姉ちゃんとの電話を切り、夕食の準備を始めた。
そして、夕食を食べて、後片づけをして、お風呂に入る。

今日は仕事が早く終わって、早く家に帰ってこられたから、時計を見るとまだ二十一時だった。
私はお姉ちゃんからもらった洋服をまた広げたり、本を読んだりして、ゆっくりと過ごしていた。



……時折、ちら、と壁のカーテンに目を向ける。
専務は、まだ帰ってこない。帰ってくれば、部屋の電気が点いた時にわかるから。まあ、その前に玄関が開く音も聞こえるけど。



結局、専務が帰ってきたのは私がそろそろ寝ようかなと思っていた時間だった。



「お、お疲れ様でした。遅かったんですね」

電気の点いた部屋の方をカーテン越しに向きながらそう言った。


カーテン越しとはいえ、特別用があるわけじゃない時はなるべく話しかけないようにしてるけど……(プライベートがあるわけだし)、さすがに帰りが遅かったので、お疲れさまです、は言いたかった。


……なんていうのは、本音でもあるけど、少し言いわけでもあったかもしれない。
本当は、専務とほんの少しでいいからお話したいな、っていう下心もあったと思う……。



すると専務は、無言でカーテンを押してくる。

なんだろ? カーテンを開けろってことかな? そう思い、私はカーテンを止めてある画びょうを外した。カーテンがはずれ、専務と直に向き合う。



……すると。


(わぁ……)

専務は明らかに疲れ、なにより明らかに機嫌の悪そうな顔でそこにいた。


「お、お仕事忙しかったんですね」
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