エリート上司と秘密の恋人契約
「待って。送るからこっちに来て」


「え?はい……」


駅の方へと体を向けていた私は、背後から手首を掴まれ、躊躇う暇もないくらいの早業で手を握られ、逆方向へと引っ張られた。

若い子ではないから、手を握るまでのドキドキが欲しいとは言わないけど、早い展開についていけるかどうか不安になる。

がんばろるか……。

諸橋副課長はやっぱり車通勤で、会社の地下駐車場まで連れてこられた。

車に詳しくはないので、車種は分からないけど、色は白でL(エル)に見えるマークが正面の真ん中についている。


「美弥は免許持っている?」


「一応持ってはいますが、ペーパーです」


学生の間に免許は取得したものの、車を購入しないから運転したのも数える程度。免許証は身分証明書の役割しかしていない。

なかなか座り心地の良い助手席だった。住所を告げるとナビに行き先が入力されて、案内がスタートされる。

何を話さない空間にナビの音声だけが響く。

座り心地は良いけど、居心地は良くない。

静かな空間から抜け出そうと話題を探していると先に隣から声が聞こえてきた。

< 17 / 232 >

この作品をシェア

pagetop