エリート上司と秘密の恋人契約
突然和真の声が聞こえて、顎までを湯船に浸からせた。

曇りガラスドアに人の形が見えて、鼓動が早くなる。


「あ、いや…」


「はい? なんでしょう?」


「いや、やっぱりいいや。ゆっくり入っていて」


わざわざゆっくり入れと言うためにここまで来た? たったそれだけのために?


「ちょっ、和真。待って!」


呼び止めたけど、早々と姿を消してしまう。なんのために来たのか謎だったけど、この姿では追うことも出来なく立ち上がりかけた私はもう一度湯船に体を埋めた。

綺麗な夜景を見ながらの入浴は贅沢な感じがして、ゆっくり入ってという言葉にも甘えて、手がふやけるまで堪能した。

体は湯気が出そうなくらいほっかほかになった。

一人ならバスローブを着て部屋に戻りたいところだけど、和真がいるからそうもいかない。

色気のないギンガムチェック柄のパジャマを着て、部屋に戻る。


「あれ? 和真?」


部屋の中は静か。ソファーに座ってテレビでも見ているかと思ったけど、姿が見えない。

ベッドのほうに行くと小さく寝息が聞こえてきた。

寝てる?
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