エリート上司と秘密の恋人契約
全く言っていることが理解できない。この人の前で笑ったことがあった?……ないはず。

話したこともないのだから、もちろん笑ったこともない。


「あまり時間がないから、明日までに返事を聞かせて。明日も残業する?」


「多分一時間くらいはするかと思いますが…」


「じゃあ、明日の7時にここで待っているから。どんな返事でも必ずに来てね」


どんな返事でも必ず行かなければならないなんて気が重くなる。どんな返事をしたらいいのか迷う。

「ごめんなさい」と理由を言わないで、断っても納得してくれるのかな?

だって、理由なんてない。

しいてあげるなら、よく知らないから付き合えません……としかない。

本当に顔と名前しか知らない。そんな人と付き合うなんて、たとえ1ヶ月だけだとしてもあり得ない。


「じゃ、明日。気を付けて帰ってね」


カフェの前で別れると諸橋副課長はまた会社の方に向かっていった。会社の地下には駐車場がある。車で通勤しているのかな。

電車通勤の私は後ろ姿を見送ってから、駅へと歩き出した。
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