声が聞きたくて


けど、いくら待っても寝室には来てくれず
私の声が届かなかったことに気がついた



今まで、どんなとこでも
私の声は雅人さんに届いていたはずなのに
よりによって……今日。



「あずさ、寝てるのか?」


タオルで髪をワシャワシャと
乾かしながら部屋に入ってくる雅人さん



『……おかえりなさい』



「ただいま」
「……何があった?」



雅人さんは察してくれる
けど……けど、言えない


逞さんは雅人さんの側近で
なくてはならない人

今日のことを伝えたら
雅人さんは逞さんを……


そんなのはだめっ。
だめ……なんだ。
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