声が聞きたくて


「逞、車」


「承知」



「ゆっくりだ……ゆっくりだ…」


そう聞こえたのは
遠くの方で……


彼が私を支えてくれていたから
倒れずに済んだ……


大丈夫……、
大丈夫……。



『……大丈夫』


「ん?なんだ?」



そう、彼には私の声は届かない


ポケットからメモ用紙とペンを出し
急いで書いた


【ご迷惑をおかけしました】
【もう大丈夫です】


そう見せると
彼は一瞬、怖い顔をした


「お前……もしかして……」


……声が出ねぇのか?




イヤホンの音が……
いつも気に入って聞いてる曲が
今日だけ雑音に聞こえた


どうしてかわからないけど
彼に、声が出ないことを
知られたくなかった……。
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