お帰り、僕のフェアリー
結婚式を挙げる教会へは毎週通うようになった。
歴史のある大きな大聖堂にはかなり多くの参列者を受け入れられそうだったので、思い切って石井さんに提案してみた。
……挙式日時と教会を、静稀には内緒で告知することを。
榊高遠くんのファンクラブは、退団と同時に解散となったので、これが本当に最後の通信となった。

5月半ば、僕らの結婚式が執り行われた。
大聖堂は榊高遠くんのファンで満員御礼となり、入りきれなかった方々は二階のテラスへと上がられた。

フランスからは伯父だけでなく、Catherine(カトリーヌ)もやってきて祝福してくれた。
……ちなみにカトリーヌとAlain(アラン)の間にはまだ子供が生まれていない。
不妊治療を受けたところ、アランの精子の運動率がかなり低いらしい。
人工授精が成功すればいいのだが、このままでは厳しいようだ。

「アランは、身元の分からない提供者の精子をもらうぐらいならセルジュのをもらいたい、らしいわよ。」

控室でカトリーヌにそう言われて、僕は困ってしまった。
「これから、僕、結婚式なんだけど……すごいこと言ってくれるね。」

「別に私とあなたにsexe(セックス)しろって、アランは言ったんじゃないわよ、あなたの活きのいい精子を試験管にもらえばいいの。それなら静稀も許してくれるでしょ?」

カトリーヌは艶っぽく微笑んで、付け加えた。
「表向きは。」

……。

「君、全然、懲りてない?」
僕は苦笑して、たくましい従妹に尋ねる。

カトリーヌ、僕にそっともたれるように抱きついてきた。
「懲りたわ。もうとっくにあなたは諦めた。でも子供は必要なの。あなたとの相性の良さは折紙付きでしょ。」

僕は、カトリーヌをなるべく優しく僕から引きはがす。
「本気なら協力するのはやぶさかではないけどね、こんな風に僕に触るのは、禁止。僕は静稀のものだってちゃんと理解してくれなきゃ、君を抱いてあげない。」

僕の俺様な言葉を、女王様なカトリーヌはとても前向きに受け取ったらしい。
「ありがとう。約束よ。楽しみにしてるわ。」
そう言って、控室を出ていった。

入れ替わるように入ってきた伯父に、僕はうらみがましくこぼす。
「Thierry(ティエリー)、カトリーヌとアラン、本当に大丈夫なの?僕との子を育てる気なの?不自然じゃない?」

伯父は肩をすくめた。
「あの時とは事情が変わったからね。全ては神の思し召しだよ、セルジュ。」

「……その神様に、僕はこれから静稀との永遠の愛を誓うんだけど……。」

僕がそうこぼすと、伯父は苦笑した。
「セルジュ、浮気じゃない、ボランティアだよ。君の善行が我が家を救う、かもしれない。神様があの子を僕らに返してくださるかもしれないんだよ。」

伯父も従妹も、本気で僕を種馬にする気なのか。

僕は結婚式前なのに、頭を抱えた。
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