生神さまっ!
突然、目の前に、ほわっとした感じの暖かい小さな白い光が現れる。

そばには筒姫。彼女の左手の上で、その光は光っていた。




「…意味、わかんねぇ」




「分からなくてもいいの。

もう1つの"条件"を満たさなきゃ、1つ目は成り立たないの」




じゃあ先にそっちを言ってくれよ、そう思った。

けど…"もう1つの条件"を聞いた瞬間、なんで最後に言ったのか、なんとなく分かった。




「夏樹がこの世界から抜け出すには、ヒトの魂を差し出さなきゃいけないの」



「…魂?」



「…簡単に言えば、


夏樹が能力を得て"あっちの世界"に行くには、




ヒトが死ななきゃいけないの」





「…え、は?どうゆう…」





ヒトが、死ななきゃいけないって言ったか、コイツ?

けど…その無表情さから、冗談を言ってるとは思えない。


ただ俺は、自分より赤いその目を見る。




「…夏樹の場合"お迎え"が早すぎたの。
もっと遅いはずだったの。

でも…これ以上遅いと、夏樹は自分から死んでしまう。それじゃダメなの。さすがに、ツクヨミにまで迷惑をかけたくないの。


だから、夏樹…」




ぐいっ!と、筒姫が少ししゃがみ込み、俺の顔に一気に近づく。

目の前に彼女の白い顔と赤い目。


そして、赤く小さな唇が、動く。




「あなたが天界に行きたいなら、

命を持つ者を殺さなきゃいけないの」





耳に、すっと届いた綺麗な声。


…なぜか、その言葉を聞いた瞬間…迷いが、消えた。



さっきまでの俺のうろたえぶりはどこへ行ったのか。


あることしか考えられず、そのことで脳内がいっぱいになる。




「…どうするの?」




筒姫が、俺に小さな声で尋ねる。




暗い暗い闇の中。

その闇より暗い俺の心が、その問いに答えた。





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