生神さまっ!
ちょっと困ったように笑う彼は、私に目を向けると、少し頭を下げた。




「初めまして、秋奈様。

あなたを見るのは初めてではないのですが、直接話すのは初めてですね。


元彰と言います、冬斗様の付き人です。

どうかよろしくお願いします」



同い年とは思えないほどうやうやしく頭を深く下げる彼に、ちょっと戸惑う。


返事をしない私をおかしく思ったのか、彼が少し顔を上げた。



だって…頭の中、なんだか…ぐるぐる、ぐちゃぐちゃ…って、なって……




彼の顔を見て…思い出してしまう。

脳裏に浮かぶその顔。私を支えてくれた、その笑顔。

彼の顔と……お父さんとお母さんの姿が交互に思い返される。
点滅するようにお互いが一瞬一瞬を私の脳裏で取り合って……




「………りょう、た……?」



なんとか出たその言葉は…

……あの人の、名前だった。




大丈夫。わかってる。

目の前にいるこの人が、亮太じゃないってことぐらい。

分かってる。分かってるんだよ。


分かっているはずなんだ。




「…秋奈」


「っ!……ふゆ、と…」



「…元彰。

ごめん、少し2人にさせて」



彼は、何があったか分からない、とでも言いたげな表情をしていたけど、すぐに笑顔でうなずいた。



「わかりました。

…約束は、いずれ守ってもらいますからね」



「うん…多分」



「……やめてくださいよ、そうゆうの」





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