生神さまっ!
足の力が一気に抜けて跪く。

なんで?そもそもなんで?
なんで私がここにいるのだろう。


私はスキー旅行に来ただけ。お母さんとお父さんと、旅行に来ただけ。

私は普通の人。

けど、彼は違う。


冬の力を、持っていた。


なんで私が?なんで私がこの場にいて、こんな思いをしなきゃいけないの?


目の前で人が死ぬところを見るのが、普通なの?




「助けて…だれか、助けてよ…

なんで、なんで…ふゆとを、とうやを…わたしを、助けてよ…」



うまく呼吸が出来ない。

荒くなっていく息に耐えきれず、横になる。

痛すぎるほどに冷たい床がほおに、手に、身体に刺さる。



ただ暖かいのは、私の目から流れる涙だけだった。







「…予想より予定より、だいぶ違う…」



私以外のそんな声が聞こえたのは、私が倒れてからどれぐらい経ったあとだろう。

綺麗で可愛らしくて、聞くだけでどこかほっとするような声。

その声にまるで魔法でも使われてるような、そんな声。



「かわいそうに。

あなたもまだ、早すぎるのに」
< 645 / 686 >

この作品をシェア

pagetop