腹黒司書の甘い誘惑
言ったら仲がぎくしゃくしてしまうと、幼いときは考えていた。
我慢していようと思っていた。

だけど、そんなことで母との仲がおかしくなるようなことはないよね。

大人になって言うことが億劫でそのままだったけれど、はっきり言ったら胸がすいた。

「はいはい、わかったわよ」と不満そうに言った母だけど、キッチンへ歩いていく様子は普通だった。

わたしは目尻で母の姿を見ながら、ダイニングテーブルで久々に母の作ったお昼ご飯を食べた。


のんびりと休日を過ごした数日後。

浮かれ気分から一変、わたしは眉根を寄せて悩んでいた。

昼食を取り終え、事務室のデスクでペンを転がす。

柊也さんと予定を作るタイミングがわからない……。

あの人の性格的に女に対してメールなどでマメに連絡をするようなタイプではないだろうから、話は完結にスマートに電話などで持ちかけるべきなのだろうけど。

『デートしませんか?』って言うの?
なんだか恥ずかしくて緊張してしまう。
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