腹黒司書の甘い誘惑
柊也さんは教師を目指していたと、聞いていたから。

「子供が好きだから保育士もいいなと思った時もあったけど、俺がなりたいのはやっぱり教師だ」

柊也さんが間を置くように視線をそらして笑みを浮かべたから、わたしも微笑んで頷く。

「子供の頃、家が学校を経営しているのを知って、自分は学校に関わる仕事、教師になるんだって思ったのに『親も兄も教師だからお前もそうだろ』っていう周りの目に何故か反抗したくて、大学を出てからこうして図書館の管理をしてた」

視線を落とした柊也さんを、わたしは黙って見つめて話を聞く。

「笹本から聞いたと思うけど、あの頃は色々うんざりすることが多かったんだ。一般企業に就職しようかと考えたりもしたけど、自分のなかで何も決まらなかった。反抗心と自分が本当にやりたいことがごちゃごちゃしていたんだと思う」

柊也さんはきまりの悪い顔でわたしに視線を向けた。

「公立の採用試験はもう無理だから、私立を受けてみようかと思ってる。準備期間が少ないから厳しいけど、この道に進みたいと思うから」

彼の真剣な眼差しに、わたしは強く頷いた。

「いいと思います。わたし、柊也さんのことを応援する」

そう言ったわたしに柊也さんは目を細め、握っているわたしの手に視線を向けた。
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