腹黒司書の甘い誘惑
わたしはどうしたのかと、首を傾げる。
柊也さんは静かに笑みを浮かべた。

「君のおかげだよ。ありがとう」

温かみのある声に、わたしは頬を緩める。
言葉は発しないで、腕を伸ばして柊也さんの手を握った。

そうしたら、しっかりと握り返された。

「君のそばにいると落ち着く。女なんて、と思っていた俺なのに、君なら安心できる。なんでだろうな。こんなにお節介で、ぼけっとしてて、椅子から落ちるような危なっかしい女なのに」

「……あの、それってわたしのこと貶してますよね!?」

くすくす笑う柊也さんを、わたしはむすっとした顔で見ていたけど、あまりにも良い笑顔だからわたしまで口許が緩んでしまった。

すると、柊也さんは笑うのをゆっくりとやめて、少し真面目な表情になった。

「最近、自分の気持ちに余裕ができた。だから、今までなんとなく隅に置いていた事をしっかり考えるようになった」

わたしを見つめながら話す柊也さんを、わたしはまっすぐ見つめていた。

「教師になりたいんだ」

その言葉を聞いて、温かい気持ちが胸にふわりと広がった。
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