腹黒司書の甘い誘惑
わたしは再び彼に近づいて、持っている荷物を勢いよく相手に差し出した。

「本です! これを届けにきました!」

「そんなに大声出さなくても聞こえる」

小馬鹿にして呆れたような笑みを作った柊也さんは荷物を受け取った。
そしてすぐに中身を確認してわたしを目尻で見る。

「残念だな。これでもう頼む本がない。君がここへ来る理由を作れないや」

「それはよかったです」

わたしはつんとした口調で言った。

最初抱いていたわたしの気持ちを馬鹿にして、弄ぶようにひたすらわたしをからかう彼と、これでしばらく会わないですむと思うと気が楽だ。

「結構君に会うの楽しみだったんだけどな」

勝手に言っていれば、と思う。
わたしは柊也さんをにらんだ。
すると彼は目を細めていたずらな表情を作る。

「そうだ。いっきに本を頼みすぎて俺一人じゃ色々と整理が追い付かない。手伝ってくれる? 来週から」

「はい?」

わたしは眉をしかめて柊也さんを見た。
彼は口許を緩める。

「君も事務員としての仕事があるだろうから、夕方だけでいいよ。よろしく」

「ちょ、ちょっと待ってください、なんでわたしが……」

「今思いついて目の前に君がいるから。これは仕事だよ。学園のための、ね」
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