腹黒司書の甘い誘惑
わたしの頬が一瞬で熱くなった。
脈を速くさせながら柊也さんを見ていると、彼はこちらを見て唇の端を上げる。

「寝起きだったから君がイイ女に見えたんだ。申し訳ないね、そんなに顔を赤くすることになっちゃって」

申し訳ないと言いながら悪びれた様子を感じられない柊也さんに、わたしは更に熱が上がった気がした。
なんなの、この人!

「最悪です!」

「その割りにはまったく動かないで俺のそばにいたよな」

「そ、それは」

「満更でもないってことだろ?」

「ち、違います!」

わたしが慌てれば慌てるほど、柊也さんは面白そうに口許を緩める。

冷静になれ、と自分を落ち着かせようとするけれど、なかなか恥ずかしさに勝つことができない。

あの時わたしは柊也さんのそばから動くことができなかった。
キスをしてしまいそうだったのに。

自分が信じられない。わたしを馬鹿にしてくるこの人への気持ちなんて、もう終わりにしたはずなのに。

胸が鳴ってしまう自分が信じられない。
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