腹黒司書の甘い誘惑
「は、はい!?」

わたしは動揺して立ち止まる。
理事長はそっとこちらに体を向けて、わたしを見下ろした。

「君は……図書館にいる司書と親しくしているのかい?」

探るような感じで、言葉を発するときの理事長の瞳がためらうように揺れていた。

その様子を見たわたしは、以前、理事長の話で素っ気ない態度だった柊也さんと、中庭の通路で兄弟なのに挨拶もしなかった二人の姿を思い出した。

「えっと、親しいわけでは……。今ちょっと、図書館の仕事を手伝っているんです」

「……そうか」

理事長は眉尻を下げながらも、やわらかに微笑んだ。

お二人には何かありそうな感じがする。
だが、他人のわたしがあれこれ聞くわけにもいかない。

と、一応弁えた考えは頭の中にあったのに、どうしても気になった。

「あの、理事長と柊也さんは仲が悪いのでしょうか……」

失礼だと思いながら恐る恐る聞いたわたしを理事長は目を細めて見つめてくる。

「何故? 向こうが何か言っていたのかな」

「あ、いえ、なんかそんな雰囲気を感じたというか……」
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