腹黒司書の甘い誘惑
「サイン、どれ」

「ここにお願いします」

わたしはファイルを開き、書類を出して記入欄を指差す。

柊也さんは左手で支えながらファイルの上で自分の名前を書いた。

「……これでいい?」

「はい、ありがとうございます」

ファイルを閉じたわたしは、顔を上げて柊也さんを見た。

目が合うと柊也さんはすぐに視線をそらし、わたしに背を向けてカウンターへ戻る。

「用は済んだろ。とっとと帰って」

声はいつもと変わらないけれど、動作には焦りがあるように感じる。

じっと柊也さんを見ていると、彼の瞳がちらりとこちらに向いた。

わたしが気になっていることを柊也さんは察している。

だから「聞くな、帰れ」という顔で見てくるのだと思う。

だけどそれって益々気になる。

「その紙芝居はなんですか?」

カウンターまで歩み寄ったわたしに、柊也さんは顔をしかめた。

「別に」

「この図書館のものですか?」

「……違う。俺が自費で購入して、保管はここでしてる」

「紙芝居を自費で? どうしてですか?」
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