あるワケないじゃん、そんな恋。
「今日は一回限りな」


羽田は観覧車のチケットを買いながらそう言った。
イブの夜、真っ暗な空に輝いてたイルミネーションは、明るい空の下で輝きを落としてる。


「別にいーよ。もう一度、最初からやり直しってだけでしょ」

「…違う!最後からやり直そうっての!」

「最後から…?」


どういう意味…って言葉は閉ざされた。
動き始めたばかりの観覧車はガラガラで、直ぐに乗ることができたから。


「足元気をつけろよ」


イブの時とは違って、羽田は自分が先に乗り込んだ。
後から乗ろうとする私に手を貸し、ぎゅっと掴んで引き寄せる。

車の中とは違う力の強さに、胸をときめかせながらシートに座った。


「朝だから眩しい…!」


街の中が白っぽく見える。
空気が乾燥してるせいかも。


「夜の観覧車もステキだけど、朝の観覧車も清々しくていいね〜〜♪」


やたらお喋りしてたい気持ちがするのは何故だろう。
羽田がボォ〜と外を眺めてるせい?


「……今朝も寝不足なの?」


やっぱりあれこれとサプライズでも考えてお疲れなのかと思った。


「いんや、昨夜は早く寝た……」


そういう割には元気なくない?
それに何だか様子変だし。


「羽田さ…、……具合でも悪いの?」


いけない、いけない。
つい「さん」付けモードが出そうになった。


「悪くねーよ。心配してくれるワケ?」

「うん…まあ一応」

< 160 / 209 >

この作品をシェア

pagetop