あるワケないじゃん、そんな恋。
「なっ……」


ひょいっとケーキの箱を取り上げ、ガシッと私の腕に自分の腕を通す。


「………今だけだぞ!」


ぎゅっと脇に挟むようにして歩かれる。

その歩幅が、何だかさっきよりも少し狭い。


しかも、帽子越しに見える顔が………






(ーーーーー真っ赤だ…)





呆気にとられる。


今日は私、羽田に驚いてばっかいる……。




(普通に彼氏っぽく接してくれてる……。私が初めてだと言ったから……?)



そんなのアリなの……?

私これから、羽田を思いきり落とそうと考えてるのに………。




(こんな普通に演じられたら困るじゃん。やめてよ……。練習なのに……)



ぎゅっと挟まれた腕に力が入った。

それに気づいた羽田が、すっ…とこっちに視線を下げた。


「……早いか?」


「えっ…何⁉︎ 歩くの⁉︎ ううん、大丈夫!」


声裏返っちゃったよ。

なに上がってんの、私。


「このエスカレーター上ったら着くから。それまで腕外すなよ」


赤い顔がそう言って前を向いた。

鼻先が赤いのは寒さのせいだとしても、その頬の赤みは明らかにテレだよね。


羽田がテレてる。


私のことで……






(きゃ〜っ! なんか感動〜っ!!)



この瞬間を待ってたのよ!
羽田をハッピーにして、メチャメチャ喜ばせる!


そして…


それから………






「菅野、着いたぞ!」



羽田の声に目線を上げた。



見上げた夜空には、ライトアップされたーーーー








「………観覧車…」







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