おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「トラくんがいなくなって、さみしくて、部屋に一人でおられないんでしょ?」



「………そんな、わけ」



私は笑みを浮かべる。


でも、唇が歪んで、頬がこわばって、うまく笑えない。



「そんなわけないじゃん。

べつにトラの一人や二人いなくたって………ていうか、トラとかどうでもいいし。

過去の人だよ、過去の人!」



私は必死で言葉をつないだ。



香苗が眉根を寄せて見てくる。


その視線に何かを見抜かれてしまいそうで、私は目を逸らした。



「べつにトラのことなんか関係なくてね。

ただ、ひと恋しいっていうか。


ひとりでご飯食べるのも、ひとりでお酒のむのも、なんか味気ないし。

だから誰かと一緒に食事したいってだけで」



「…………」



「だから、香苗はなにも心配しないで、安心して結婚しなよ!

べつに香苗に付き合ってもらえなくても、家でご飯たべるし。

ぜんぜん平気だから、それくらい。

私だっていい年なんだし!」



「………そう。

まあ、真子がそう言うなら、いいんだけど」



香苗は細く息をもらして、ウェイトレスが持ってきたバゲットにバターを塗り始めた。


これ以上なにか言ってくることはなさそうだ、と私はほっと安堵する。




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