クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
顔を見なくても気配だけでわかる。

「あ、朝比奈先輩!きゃあ!あつっ!」

朝比奈先輩の方を振り返ると、カップを持った私の左手に熱湯がかかる。

あまりの熱さと痛みで、私は持っていた紙コップを床に落とした。

「馬鹿!何をやってる!」

「すみません!」

手の痛みを堪え屈んで紙コップを拾おうとすると、朝比奈先輩の手が伸びて来て私の手を掴んだ。

「冷やすのが先だろ!」

朝比奈先輩はすぐ側のシンクまで私を連れて行くと、水道の蛇口をひねって流水で私の手を冷やす。

「あ……あの……大丈夫ですから」

一緒にいるのが気まずくなって朝比奈先輩に声をかけるが、彼は引き下がらなかった。

「大丈夫かどうかは俺が判断する」

冷ややかなその声にもう何も言えなくなる。
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