クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
朝比奈先輩は私の目を見て意味ありげに微笑むと、後ろ手を振って歩き去る。

その姿を見送ると、真田さんが私の元に歩み寄った。

「ねえ、池野さん。朝比奈と何かあった?『ひよこ』って朝比奈呼んでたけど、知り合いだったの?」

「……知り合いじゃないです。ただ……私がドジやっちゃって『ひよこ』って笑われただけです」

「ふうん、あのクールな朝比奈がね。それは、興味深いね」

私の言葉に真田さんがニヤリとする。

全然……興味深くない。

『圏外』の相手に嫌がらせでキスするって酷い。

キス……初めてだったのに。

あの人、絶対性格悪い。私が動揺するのを見て楽しんでるんだ。

明日からどんな顔して接したらいいのよ、もう!

ますます顔合わせられないよ~。

私が発狂しそうなくらい動揺していると、真田さんが恐ろしい事を口にした。

「あいつ女の子に逃げられた事がないから、池野さん気をつけてね。朝比奈も男だし、逃げると多分……食われるよ」
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