ヒロインになれない!
……全然冷静じゃないし……正面から向き合えないだけ……本当は目をそらしてるだけ……。
突発的に、手首を切ってしまうかもしれない。
ちゃんと生きていく自信がない。
日常生活に戻る自信がない。
どうすればいいんだろう……。

怖い。
ただ、怖い。
自分自身を信じてあげられない。

こんな私なのに……
……こんな私なのに……ほんとに……恭兄さまは、変わらず愛してくれる……。
不思議と、それだけは信じられる。

申し訳ないのに、不釣り合いなのに、私にはそんな資格ないのに……それでも、恭兄さまの愛情はかけがえのないもので……。

……甘えて……いいのだろうか。

こんな私が、本当に……いいの?

ぶるぶる震えながら泣き続ける私に、恭兄さまは何度も何度も耳元で囁いてくれた。

「愛してるよ……愛してる……僕は何も変わらない……昔もこれからも、ずっとずっと由未ちゃんを愛してる……愛してるよ……」


私は恭兄さまに洗脳されたのだろうか。

……ささくれだった心ごとすっぽりと包んでもらった私は、まるで子供のように恭兄さまから離れようとしなかった。


消灯時間直前に恭兄さまの点滴が終わると、看護師さんがやってきた。
ほんの数分の間でさえも離れていたくなくて、私はベッドから降りて恭兄さまの簡易ベッド横の椅子へと移動した。

6日間、点滴だけで眠り続けたせいで、脚の筋肉が落ち、目に見えて細くなっていた。

でもそんな私より、痩せこけた恭兄さまって。
やっぱり、変な人。
困った人。

……愛しい人。



しばらくして、これも後遺症の1つ……依存症なのだと気づいた。
でも、アルコールや薬物じゃなくて、もともと兄に「共依存」と言われてた恭兄さまに依存するのは至極妥当のように思えた。

山崎医師に指摘されるまでもなく、私は病的に恭兄さまに依存している。
でも、だからどうだと言うのだ。

恭兄さまが、窮屈に思うなら、うっとおしがるなら、もちろん大問題だろう。
でも、私が必要以上に恭兄さまにくっついていることを、恭兄さまが嫌がるはずがない。

慈愛に満ちた瞳で、私以上の熱を込めて見つめてくださってる。
私はようやく息を吹き返した気がした。

その夜、2つのベッドの間のカーテンを開けて眠った。

目を開ければ、恭兄さまの寝顔が見えることに、私はどれだけ安心しただろう。
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