ヒロインになれない!
恭兄さまは、私の涙をティッシュで拭ってくれた。
「由未ちゃん、ずっと譫言(うわごと)で、僕を呼んでくれてたんだ。初恋の人でもなく、お父さんでもなく、義人くんでもなく。僕に助けを求めて、僕に謝って、僕を呼び続けてくれたんだよ。なのに……」
恭兄さまの瞳に涙が浮かび上がる。
「なのに僕は……助けてあげられなくて……」
……胸がムカムカしてきた。
あかん、また吐きそう。
「吐くっ!」
私は、枕元のガーグルベースンを引き寄せて、そこに吐瀉した。
今度は黄色い粘着質な液体だった。
肩で息をする私の背中をさすってくれる恭兄さま。
……恭兄さまは悪くない。
でもまだ、思い出させるようなことは言ってほしくない。
平気なようで、身体が拒絶しているのかもしれない。
苦しくて、にじみ出る涙を流しながら、私は言った。
「……よりによって、一番暴力沙汰の苦手そうな恭兄さまを呼んでも、恭兄さまかて困るわ、ねぇ?……今は、苦しい。お願いやからそっとしといて。思い出させるようなこと、言わんといて。」
恭兄さまは、とても傷ついた顔になった。
しまった!
私は、自分の言葉に後悔した。
八つ当たりするつもりはないのに、何でこんな言い方しかできないんだろう。
……さっき山崎医師の言ってた、他人に対する攻撃……じゃないよね?
私は、自分自身の言動すら信じられなくて、我が身を抱きしめて震えた。
「違う……こんなこと……言いたいんじゃない……違うのに……恭兄さま……」
震えが止まらない。
「恭兄さま……助けて……」
私はそう言いって、はじめて、恭兄さまの胸にしがみついて泣いた。
「ごめんなさい……ごめん……ごめん……」
何度も繰り返して謝りながら、号泣した。
恭兄さまは何も言わず、しっかりと抱きしめて、背中をさすってくれていた。
……もし、レイプされた時に既に恭兄さまと恋人関係だったなら、私はすぐに恭兄さまにいっぱい泣きついて、いっぱい慰めてもらって、いっぱい甘やかされることで傷を癒すことができたんだろうと思った。
でも、今の私達は、まだ微妙な状況で……ただでさえ身分違いという負い目のある私は、これで決定的に、恭兄さまにふさわしくないと信じ込んだ。
京都に帰ろう、とも思った。
でも、目覚めてみれば、恭兄さまはまたげっそり痩せてしまってて……やっぱりこの人をほっとけないとも思って……どうしたらいいのかわからなくなった。
山崎医師からは怪しい雰囲気が漂ってるし、私より先に恭兄さまを餌付けに成功してたみたいだし……。
やっぱり、私、すっかり混乱してる気がする。
「由未ちゃん、ずっと譫言(うわごと)で、僕を呼んでくれてたんだ。初恋の人でもなく、お父さんでもなく、義人くんでもなく。僕に助けを求めて、僕に謝って、僕を呼び続けてくれたんだよ。なのに……」
恭兄さまの瞳に涙が浮かび上がる。
「なのに僕は……助けてあげられなくて……」
……胸がムカムカしてきた。
あかん、また吐きそう。
「吐くっ!」
私は、枕元のガーグルベースンを引き寄せて、そこに吐瀉した。
今度は黄色い粘着質な液体だった。
肩で息をする私の背中をさすってくれる恭兄さま。
……恭兄さまは悪くない。
でもまだ、思い出させるようなことは言ってほしくない。
平気なようで、身体が拒絶しているのかもしれない。
苦しくて、にじみ出る涙を流しながら、私は言った。
「……よりによって、一番暴力沙汰の苦手そうな恭兄さまを呼んでも、恭兄さまかて困るわ、ねぇ?……今は、苦しい。お願いやからそっとしといて。思い出させるようなこと、言わんといて。」
恭兄さまは、とても傷ついた顔になった。
しまった!
私は、自分の言葉に後悔した。
八つ当たりするつもりはないのに、何でこんな言い方しかできないんだろう。
……さっき山崎医師の言ってた、他人に対する攻撃……じゃないよね?
私は、自分自身の言動すら信じられなくて、我が身を抱きしめて震えた。
「違う……こんなこと……言いたいんじゃない……違うのに……恭兄さま……」
震えが止まらない。
「恭兄さま……助けて……」
私はそう言いって、はじめて、恭兄さまの胸にしがみついて泣いた。
「ごめんなさい……ごめん……ごめん……」
何度も繰り返して謝りながら、号泣した。
恭兄さまは何も言わず、しっかりと抱きしめて、背中をさすってくれていた。
……もし、レイプされた時に既に恭兄さまと恋人関係だったなら、私はすぐに恭兄さまにいっぱい泣きついて、いっぱい慰めてもらって、いっぱい甘やかされることで傷を癒すことができたんだろうと思った。
でも、今の私達は、まだ微妙な状況で……ただでさえ身分違いという負い目のある私は、これで決定的に、恭兄さまにふさわしくないと信じ込んだ。
京都に帰ろう、とも思った。
でも、目覚めてみれば、恭兄さまはまたげっそり痩せてしまってて……やっぱりこの人をほっとけないとも思って……どうしたらいいのかわからなくなった。
山崎医師からは怪しい雰囲気が漂ってるし、私より先に恭兄さまを餌付けに成功してたみたいだし……。
やっぱり、私、すっかり混乱してる気がする。