【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
表情も心無しか険しい気がする。いつもはどんなに他の子達が疲れてたり、忙しかったせいでピリピリしていても爽やかな笑顔を絶やさない人なのに。


「悪いけど、ちょっと美姫借りるよ?」


そんな大喜さんがようやく日誌から顔を上げたかと思うと立ち上がり、私を休憩室から出るように促した。


仕事の事だろうか、それとも、気遣って言ってはくれたものの、やはり忙しいのに彼氏なんかを連れて来た私を責めるのだろうか。


私は男らしく広い背中と、明るいのに温かい、畳のような色合いの髪の毛を揺らし歩く大喜さんを追い掛ける。


大喜さんは上背もあるし、脚も一際長いから、追いていかれないように無意識に小走りになる。


一瞬、振り向いた時にぐったりしていたタクと目が合ったが、タクの感情は読み取れないまま、私は部屋を後にした。


不安。大喜さんのその態度も、タクの表情が読めなかった事も、蒼次郎がタクや皆と同じ空間にいる事も、全ての要因が私を不安にさせて行く。
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