【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「……で?何なのあれ。馬鹿な俺にも分かるように簡単に説明してよ」
大喜さんは私を連れ出し、誰もいなくなった店内のホールの真ん中の席に座ると、突然そんな言葉を言った。
「何なの……って、何がですか?」
「あいつ。美姫の彼氏だよ。見てて胸が痛いんだけど。見てる俺の方が辛いんだけど」
あまりにストレートな大喜さんの言葉に、私は少し考え込んでしまう。
大喜さんは決して怒っている訳ではない。怒っているのではなく、心底悲しそうなのだ。こちらの胸がひりひりするくらいに。
「見りゃ分かるよ。美姫がタクさんの事しか見てないのも。……あいつもそれに気付いてるのに知らんぷりしてるのも、さ」
はあ、と溜息混じりに言われた言葉に、大喜さんには誤魔化しが聞かないと言うことを自覚させられた。
「どうせ聞いたって言わないとは思うけど、美姫もタクさんも何かあったの出し過ぎだから。それが例えば俺の勘違いだろうがそうじゃなかろうが、お前の彼氏のあいつは問い質す権利がある筈なのに、何な訳?」
私に怒りながらそう吐き出したというより、自分の考えが纏まらなくて苛々しているような表情の大喜さん。
ああ、私はまたこうやって私の身勝手で優しい世界の住人を困らせている。