【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
ここはタクの家だ。多分、迎えに来て置き場所に困って、連れて来てくれたんだ。


お酒でふわふわした頭だけれど、この部屋も、タクの香りも出来事も、一秒たりとも忘れていない。


あの日のことは、私の唯一の心の支えだから。タクと繋がって、タクの温度を感じたこのタクの部屋は、ちゃんと覚えている。


「はい、お水です。気分は悪くないですか?」


「あ、りがとう、ございます。平気」


ごくり、と冷たい水が喉を通るとなんだか言い表しようのない安心感が湧く。


起き上がり水を飲んでいる私の隣に腰掛けたタクは、私の頭を撫でて、そのゴツゴツの骨張った手で私の髪の毛を梳く。


「零さんから聞きましたよ。ついでに結構怒られました。……あまり僕を心配させないで。何だか僕、君が心配で心臓がいくつあっても足りなそうです」


優しいタクの言葉。そんな言葉を特別じゃない女の子に言ったらダメだよ。全部分かってる私じゃなかったら、自分が特別なんじゃないかって自惚れちゃうよ。


そう思いタクを見ても、視界がクリアじゃない気がする。まだ身体は、どこかにふわふわっとした靄がかかっているような感覚だ。


……今なら、なんでも言えちゃう気がする。タクを困らせる大胆行動をする事がまた出来てしまう。
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