【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
子供ながらに一生懸命で、まっすぐで大胆。そうか、僕は大人になって、その大胆な行動の大切ささえ忘れていたのかな。


「行ったらどうじゃ?タク。待たせたら凍えるんじゃろ?」


「うわっ!びっくりした。美琴ですか」


フリーズしていた僕の後ろから突然顔を出したのは美琴。


「受話音量でかいけぇ、ぜーんぶ聞こえとったよ。美姫にとってもお前にとっても大事な事がそこにはあるんじゃなか?心配せんでも俺は一口も酒は飲んどらんし、奴らの送迎は任せんしゃい」


僕の思うことなんか全て手に取るように分かるらしい美琴。


たまに思う。美琴は本物のエスパーなんじゃないかと。美琴だけじゃなくて、それは僕の周りの人間のほとんどに適用されるスキルかも知れないけれど。


「……じゃあ、お言葉に甘える事にします」


僕が言うと、相変わらず妖艶な細い灰色の瞳と薄い唇でニヤリ、と笑われた。


「たまにはお前も我が儘言いんしゃい。お前の我が儘を助ける力は持っとるよ。俺も、皆も」


なんて心強い言葉なのだろうか。美琴の後ろには、僕を信じて背中を押すように、他の三人もいる。


「行ってきます。僕の大切な物をもう失わない為に。傷付けるのを終わりにします」


カジュアルな長袖に、デニムに、スニーカーにトレンチコートを羽織った僕は、美姫の待つパリッとしたシャツにスーツの大人では無いかも知れないけれど。


それでも待っていて。未熟な僕でも、君を掴みに行くから。
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