【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
変わりたい自分、変われない自分
あの日、タクと公園出会ってからというもの、少し不思議な関係は続いていた。


電話だとお金がかかるからと、受話器越しに優しい声で言われるアドレスを必死にメモって、私とタクはメールをするようになっていた。


蒼次郎とだってこんなに頻繁にやり取りしないのに。まぁ、蒼次郎は毎日顔を合わせている分毎日電話やメールのやり取りをする必要も無いのだけれど。


「なあ美姫、今日うち来ない?今日仕事で親帰って来ないらしいから」


「ゴメン、今、生理中なんだ。また今度」


蒼次郎には悪いけど、タクと仲良くなればなるほど、彼の存在が邪魔で仕方ない。蒼次郎に割いている時間が無駄に感じてしょうがない。


だから、いつもなら自分の家に帰るよりはマシだと乗る誘いにも、乗る気にならない。


「そっか。それじゃしょうがないよな。また日曜日にデートでもしような」


心なしか淋しそうな顔で笑う蒼次郎に、思ってもない「ゴメン」の一言を投げやる。


つくづく最低な人間だ、私は。でも、そんな最低な私の濁り切った部分も、タクになら包み隠さないでおけるんだ。


自分を偽らなければいけない彼氏と、自分をさらけ出せる大人と、どちらと時間を共有したいかなんて、私じゃなくたってどちらを選ぶかなんて一目瞭然でしょう?
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