【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
氏原零はまだニヤニヤしたまま私に近寄り、私を下から上までなめ回すように観察してくる。


顎をさすり、下から上に上がってくる顔。色の薄いサングラスだったから、目が合う感覚がしっかりある。


サングラスの奥の目は、思ったよりも幼いような甘いようなそんな目に見えなくも無いが、光る眼光は威圧的。


先程までニヤニヤしていた筈なのに、目が合った時の彼の顔は無機質。何を思っているかなんて、1ミリも分かりはしない。


そして、無機質な彼から出た一言は、私もタクも驚く言葉だった。


「お前、なんか濁った目してんのな。子供らしくねぇ。そりゃ、世の中の嫌なものを見つくした大人の目だぞ」


その一言にすっかり固まってしまった私にタクは気付き、慌ててフォローに入る。


「ちょっと零さん!初対面の女の子になんて事を!道徳心に欠けてます!」


「だって本当のことだろう?穂純が高校生の時はもっと綺麗な目をしてた」


社長さんから『穂純』という人の名前が出ると、タクの顔が少し曇る。そうすぐに分かるような変化じゃなかったけれど、何故か私は見逃さなかった。


せっかくの綺麗な黒い目が、切なさとか、悲しみとか、嫉妬とか、そういった様々な感情が濁らせているのかな。


嫌だな、タクが、まるで私が見ているもやを見ているようだ。
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