【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「彼女は特別ですよ。大人びているからそう見えるんです。それに僕だって、昔からそんなに純粋な方では無かったでしょうに。……美姫、気にしないで下さい。この人は基本否定から始まる人なんですよ」


タクは氏原零の方を見て毒をたっぷり含ませて言う。やはり、その声の音からは親しさが感じられるから不思議だが。


そんなタクに、氏原零の無機質な視線は私から逸れて、私を拘束していた何かからも解放されたような感覚。


「タク……お前生意気言いやがって。減給されたいのか?ハーン?」


「こんなことで減給されたら僕、チクりますからね、あなたの奥さんに。たっぷり怒られて下さいな」


言い合う二人。お互い凄い毒を吐いているけれど、妙に仲良く見える。タクが学生時代からの知り合いなのだから、相当親しいのだろう。


「あの……私、仕事の邪魔そうなので帰りますね」


私は二人に頭を下げると方向転換をして歩き出す。ひとまず、あの人から離れなければあの拘束される感覚にまた捕まってしまいそうだったから。


「おい、待て待て」


しかし、そんな私の願いを裏切るように、大きな手で通せん坊の形をとって引き止めた氏原零。


私、この人の気に障るような態度取ったかな。それなら尚更早く、帰ってしまいたい。
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