【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「穂純ぃ!差し入れ何?」


「シュークリームだよ!これ、最近出来たあの人気の店の限定品!並んだよー!へへ!」


『穂純』と呼ばれた女の人は大喜さんと仲よさ気に話しながら、従業員達の輪の中に入り、疲労感をあっという間にに吹き飛ばす。


その途中、私の姿に気付いて大きな目を更にくりん、と大きく見開いた。特別美人ではないけれど、なんて魅力的な人なのだろう。


私には、あんな魅力的な表情は作れない。あんな、真っ直ぐ素直な表情は。


「あれ……?なんで女の子?……もしかして、実は男の子だったりして。店にもついに、流行りの女装男子投入?」


その間の抜けた一言に、私以外の全員が苦笑いを零す。私も空気から、この人はかなりの天然だと悟った。


そんな空気に、彼女はその小さく形の良い頭をこてん、と横に倒した。


この空気だけで何となく悟る。この人は誰にでも好かれるタイプの人だ。何の嫌味もない、素直な人なんだって。


私と正反対の人。私は、素直に生きるなんて難しい事を出来ないから。
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