【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
季節外れの海に、太陽が足を休めるように溶け込む。


その幻想的な風景を、タクは私に見向きもせず真っ直ぐ見据えていた。


「そんな太陽みたいな人は、海のような大きな男性に出会い、まるでこの海のように溶け込むよう光を差し込みながら、幸せにしているんです。僕は、この光景を見る度に、幸せと切なさが押し寄せるんです……」


タクの、誰よりも心地いい声が心に染みて、身体中がじんじん痛む。


私が素直な人間だったら、タクの淋しそうな背中を抱きしめることが出来たのだろう。


だけど……出来ない。私は自分の気持ちに、素直になっちゃいけないんだ。


この想いは言ってはいけないもの。消さなきゃいけないもの。タクには必要の無いもの。


タクが今抱えてる想いだって同じ。だから彼は想うだけ。遥か遠くに光り輝く太陽に不毛に手を伸ばしても、どうにも手に入らない。


辛いよね、悲しいよね、虚しいよね。だって、私も今、タクと同じ気持ちだから良く分かるんだよ。
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