【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
その、年上に好かれそうな可愛らしい男の子のような輝く笑顔で穂純さんは話を続ける。


「まだ時間あるし、今から帰りなら送ってこうか?今日車だし。女の子一人じゃもう暗いし心配だからさ」


「あ……いえ。今日は自転車なので。すみません。お気持ちだけ受け取ります。ありがとうございます」


本当は歩きで来たが、穂純さんの純粋な光にこれ以上耐えられない私は嘘をついた。


私はこうして私を心配してくれる大人に対して、平気で嘘の仮面を被る。やはり、私は簡単には変われない


「……そっか。うん、しょうがないか!じゃあ気をつけて!変な奴いたら全力でチャリ漕いで逃げてね」


「はい。失礼します」


明るく屈託のない笑顔を見せて手を振ってくれる穂純さん。なのに私は機械のように冷たい返事をしてしまう。


私って、心底嫌な奴だ。穂純さんは何も悪くない。悪い事どころか、私なんかにも分け隔てなく接してくれているのに。


タクの事を好きな一人の女の私は、タクの心を独占する一人の女性を受け入れられない。
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