俺様当主の花嫁教育
そして、再び私を見上げてくる綺麗な瞳に、一瞬不覚にもドキッと胸が騒いでしまう。


「俺があんたを、誰もが振り返るような絶世の着物美人にしてやるよ」

「な、何を……」


それこそどうやって、と続けようとして、私はキュッと唇を噛んだ。
なんだかよくわからないけれど、この人の妙な自信がどこからくるのか気になった。
そしてそれ以上に、口が悪くてどうしようもなく失礼だけど、包み隠せない気品を彼から感じた。
きっと、見た目以上に育ちのいい人なんだろう。


一度ゴクッと唾をのみこんだ。
そんな私に、彼は首を傾げながら私を試すような挑発的な瞳を向けている。


「……それだけ言い切るなら、絶対の自信があるんでしょ」


少し慎重に、探るように問いかけると、彼はフッと口元を歪ませて笑った。


「当然」

「わ、わびさびとか偉そうなこと言ったけど、あなたこそ『和』の何を知ってるのよ」

「知りたきゃ大人しく頷け。まあ、少なくともあんたに比べりゃ素養はあるよ」


いけしゃあしゃあと言ってのける彼に、思わずムッとする。
だから、そう言ってしまったのは、ほとんど売り言葉に買い言葉だった。


「じゃあ、してみせてよ。私を絶世の着物美人に」


ちょっと志麻っ、と小声で呼びながら、由香が私の腕を背後から引っ張った。


「止めときなって。なんかとんでもない見返り求められたらどうするのっ!?」


それは確かにそうだ。
一瞬ハッと我に返って、恐る恐る彼に目を向け直すと、由香の声が聞こえていたのか、彼が肩を揺らして失笑した。
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