俺様当主の花嫁教育
洋服でもあれだけ妖しさ満載だったのに、着物姿は五割増しだ。
しかも、納涼シーズンに街に出没する一般男子の浴衣姿なんかとは全然違う。
あんなだらしなく着崩すんじゃなく、きっちりと上品に着こなしていて、圧倒的な格の違いを感じてしまう。


「……馬子にも衣装だな。この言葉がぴったりな女、久々に見たわ、俺」


その口から漏れる言葉がどんなに辛辣でも、黒い瞳が小馬鹿にしたような細められても、私は御影さんの着物姿に完全に目を奪われて見入ってしまって、反応することも忘れていた。


「ん? なんだ、威勢がないな」


私の目の高さに合わせて背を屈める御影さんに思わずドキッとしながら、胸に手を当ててグッと袷を握りしめた。
すごくすごく言い返したいのに、何も言葉にならないのが堪らなく悔しい。


けれど、私のこんな反応はごく普通の一般人からしたら普通のはず。
その証拠に、受付に並ぶ女性たちも、御影さんに見惚れてポーッとしている。


そして、この周囲でただ一人、御影さんの魅力がほんの少しも伝わらない女性……。


「そんなことより、東和、あんた袴は?」


千歳さんが、私の後ろから呆れたような声を出した。


さすがお姉さん。
こんな御影さんの姿は日常的なのだろうけど、全く動じずに、相変わらずの物言いだ。
この姉弟、容姿は天下一品なのに、残念なくらい口が悪いところはそっくりだ。


「俺の点前、午後だし。まだいいだろ、別に」
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