俺様当主の花嫁教育
シレッとする御影さんに噛み付くような千歳さんに、御影さんは面倒くさそうに私を見遣った。


「この間はお互い酒が入った状態での口約束だったしな。一晩寝て起きたら、この俺が直々に時間割いて育ててやる意味があるのか疑問に感じた。それでも確かに手伝ってやるとは言ったしな。だから試してみることにしただけだ」


腕組みしたまま小首を傾げた御影さんの『試す』という言葉に一瞬怯んだ。


だってここは格式高い茶道のお家元の本家で、お茶会。
着物姿で試されるって、いったい……。


一瞬にして心の不安が顔に表れたのか、御影さんはどこか満足そうに口元を歪めて、私を覗き込むようにグッと背を屈めた。
いきなり近づく距離に、私は不本意にもドキッとしてしまった。


「どれだけ七五三になるかと思ったが、幸いそれほど悪くない。『着物美人』になるだけでいいなら、面倒な思いしてわびさびなんか知らなくてもどうにかなるレベルだ」


なんだかすごく微妙な言い方ではあるけれど、それって私の着物姿を見て、『合格』って評価をしてくれたってことなのかしら……。


思わずカアッと頬を赤く染めてしまう私に気付かず、まあねえ、と千歳さんが頷いた。


「そもそも着物って『麻呂顔』でも映えるもんだし。一般的な顔の日本人なら、誰が着てもそれほど見れなくないけどね」


悪気なくシレッと言われるから、私は心の底からガックリする。
< 25 / 113 >

この作品をシェア

pagetop