俺様当主の花嫁教育
だけど……。
私はグッと唇を噛みしめて、脇に垂らした手を握りしめた。


『着物が似合いそうにない』


その一言で、私は西郷さんに振られたんだ。
あれから数日経ったとはいえ、屈辱感は拭えない。
お人形のように黙って座って数時間過ごしてやり過ごすだけじゃ、西郷さんの目を惹いたとしても私自身が納得出来ない。


もっと……本気で悔しがらせたい。
その上で、『あんたなんかこっちからお断りよ』って一言告げてやりたい。
そのくらいしないと、私は本当の意味で立ち直れない。


「……私、やります」


一層手に力をこめると同時に、私は千歳さんにそう言い放っていた。
そして、意を決してクルッと身体を回転させて千歳さんと向き合う。


「私の恨みを晴らすには、お人形さんになるだけじゃダメなんです。本物の大和撫子になって、気品溢れる着物美人にならなきゃいけないんです!」


決意表明のようにそう言い切って、私は千歳さんに深々と頭を下げた。
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