俺様当主の花嫁教育
眉間に皺を寄せてそう言った途端、鮮やかな手つきで私の腰紐をいとも簡単にスッと解いた。
ギョッとした瞬間、御影さんは躊躇いもなく襦袢の袷を観音扉のように開いたのだ。


「きゃ、きゃあああっ!!」


御影さんの目の前でしどけないセミヌードにされて、私は本気でパニくりながら、両手で抱き込むように袷を閉じようとした。
作業に抵抗された御影さんは、とても不機嫌に私を見下ろしながら、それはそれは深い溜め息をついた。


「安心しろ。お前に欲情するほど、俺は見境ない男じゃない」

「え?」


なんだかとても腹立たしいことを言われた気がして、私は半分涙目になりながら御影さんを見上げた。
そして、不覚にもドキンと胸が高鳴ってしまう。


今、私の目の前に立って酷いことを言った和装の貴公子は、背に月光を浴びている。
御影さんの漆黒でサラッとした少し襟足長めの髪が金色に縁取られて、眩いばかりキラキラと輝いている。
長い睫毛と、その奥にある艶めく瞳。
その伏せた瞳で半裸の私を見つめながら、御影さんはクッとくぐもるような笑い声を上げた。


「志麻が全裸で横たわってたとしても、別に何もする気にならないから、安心しろ」


ニヤッと口元を歪めて嫌な笑い方をして軽く背を屈めると、御影さんは私の耳元に吐息をわざと吹きかけながらそう言った。


「っ……!!」


怒りと屈辱と恥ずかしさで、頭の中が小噴火を起こす。
カアッと赤くなった顔は、部屋の仄暗さのおかげで誤魔化すことが出来た。
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