俺様当主の花嫁教育
「東和の方は相変わらず太々しいし態度デカいけど、時々志麻ちゃんを気遣うように優しい目をするのよね」

「は?」

「志麻ちゃんは志麻ちゃんで、東和に一歩引いて連れ添ってて、奥ゆかしい感じで」

「……そ、そんなことっ」

「志麻ちゃんを御影の嫁としてお披露目出来る日が近いわ~」


一人で暴走がちの妄想を繰り広げる千歳さんを、止める術を私は知らない。


御影さんの方がどうかはともかく……私が『奥ゆかしく』見えるのなら、彼への信頼が強まったせいだ。
素直に御影さんを頼る自分が照れ臭くて、一歩後ろを歩きながら無言になってしまうのだ。


もちろん、相手への意識を変えたのは私の方だけで、二人の雰囲気が変わったというのはちょっと言い過ぎだ。
ツッコんで大きな間違いを正さなければいけないのに。


私は気付かなかったけど、千歳さんが感じた御影さんの変化って……。
――本当……?


つい口元が綻んでしまうのを意識した途端、千歳さんはググッと私の顔を覗き込んで来た。


「あらっ……? なんだか志麻ちゃんも嬉しそう……?」

「えっ!?」


意味深に語尾を上げられて、私はギョッとして聞き返した。


「あら、顔も赤い」

「っ……」


言われるがままに、反応している箇所を探すようにして、私は両手で頬を押さえた。
千歳さんは馬鹿正直な反応を示す私に満足したように、胸を張って「ふううん?」と妙に長く鼻を鳴らしてニヤニヤする。
< 78 / 113 >

この作品をシェア

pagetop