俺様当主の花嫁教育
「ほら、来い」


御影さんは私の腕を強く引いて、シンクの前に立たせた。
自分は再び私の背後に回って、さっきと同じように私の両手を掴むと、流水に差し入れた。


冷たい水が患部を打つ。
痛みを感じたのはほんの一瞬で、私の意識はすぐに背後の御影さんに集中してしまう。


「だっ……大丈夫ですから、離してっ!!」


高鳴り続ける鼓動。
このまま心臓が壊れてしまうんじゃないか、と怖くなる。
苦しさに耐え切れず、私は右手を振り上げながら身体を捩った。
一瞬怯んだ御影さんの腕を振り払って、そのままドンと胸を押して突き放した。


「いってえ……」


不意を突いたせいか、わずかによろけた御影さんが、不機嫌に眉を寄せる。
けれど、怪訝そうな瞳を私に向けた後、虚を突かれたように目を丸くした。


「……お前、顔真っ赤だぞ」

「っ……!!」


真っ向から指摘されて、私は水に濡れた両手で頬を覆った。
視線に晒されているのが耐えられず、思いっきり顔を背けて隠した。
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