君の隣
そっと赤ちゃんの手を握る涼子の隣で、慎一郎が照れたように咳払いをし、ぽつりとつぶやいた。

「似てるな、慎也に。

 寝顔が、特にそっくりだ」

それは、父親なりの精いっぱいの“愛情”だった。

──リビングの窓から、晩夏の光が差し込む。

 赤ちゃんの頬にやわらかく落ちる陽射しは、確かに“新しい家族”の幕開けを祝っているようだった。

その夜。
布団に並んで眠るふたりと、ベビーベッドの結を見守る時間の中で──

麻未が、そっと呟いた。

「……不思議。

 ちゃんと“家族”になってる。

 今日、そう思えたよ」

慎也は黙ってその手を握りしめ、頷いた。

その手のひらには、遠くの空を越えてつながった、家族のぬくもりが宿っていた。
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