君の隣
手術翌日の朝。

カーテン越しに差し込む光が、病室を淡く照らしていた。

 電子音も、モニターの点滅も、規則的に整っている。

理名の寝息が深く整っているのを確認した拓実。

 彼はようやく、ふっと長く息を吐いた。

理名は微熱と下腹部の違和感を抱えながらも、意識ははっきりしていた。

「おはよう……

 まだ、顔むくんでる?」

「むくんでも可愛いから問題ない」

「……なんかそれ、言い方ずるいよね」

笑いながらも、理名はその“普通の会話”ができることに救われていた。

 ゆっくり起き上がることさえ、今の身体にはひと仕事で、
その都度、拓実が枕元に手を添える。

「痛いところある?」

「ううん、大丈夫。

 ……あ、でも、寝返りがちょっと怖い」

「じゃあ、支えるよ」

たったそれだけのこと。

拓実の手が背中に添えられた瞬間、理名は思った。

──これからは、こうやって頼っていい。
──“強い自分”でいようとしなくてもいい。

 
< 109 / 216 >

この作品をシェア

pagetop