君の隣

休む選択

週末。

 拓実の実家を訪ねた理名は、玄関で迎えてくれた彼の母の笑顔に、言葉を失った。

 母は少し涙ぐみながら、理名の手を取った。

「来てくれてありがとうね、理名さん……。

 本当に、ありがとう」

その手は、優しかった。

 温かかった。

 こんな風に自分の名を呼んでくれる人がいる──
それが、胸に沁みた。

ダイニングには、手作りの料理が並び、父は何度も理名におかわりをすすめてくれた。

 ふたりは急かすことなく、ただ見守るように話を聞いてくれた。

 治療のこと。

 結婚式のこと。

 夕食のあと、拓実の母が、ふと真顔になった。

「理名さん。

 ……あなたがうちの子を選んでくれて、本当に感謝してるの」

 「そんな……私のほうこそ……」

 「違うの。

 拓実はね、小さい頃から、どこか無理して笑う子だったのよ。

 あなたと一緒にいるときだけ、本当に安心した顔をしてるの。
 それが、何より嬉しいのよ」

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