君の隣
理名がぽつりと呟くと、華恋がぱっと顔を輝かせた。

 「ほんと?

 嬉しい……!

 絶対、素敵な式にする。

 約束するわ」

 拓実も、理名の手をぎゅっと握り返す。

 「ここで、理名との未来を誓えるなら、俺は何も怖くない」

 春の風が、チャペルの扉をそっと揺らした。

 その音が、まるで未来の始まりを告げる鐘のように響いていた。
 
 ドレスルームでは、理名がいくつかのドレスを試着した。

理名は、ドレスルームの鏡の前で、ふと立ち尽くしていた。

 白いレースの裾が揺れるたび、胸の奥がざわつく。

 「……私、本当に、母になれるのかな」

 誰にも聞かれていないはずなのに、鏡の中の自分が、答えを持っているような気がした。

 「頑張っても、報われないなら……
 もう、頑張る意味なんて、ないのかも」

 その瞬間、涙が頬を伝った。

 拓実がそっと背後から手を添え、静かに言葉を紡ぐ。

 「……理名。

 頑張る意味は、“結果”じゃない。
君が生きてるってことだよ」

 その言葉に、理名の胸がきゅっと締めつけられる。

 
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