君の隣
午後のひととき。

 理名は呼吸器内科の業務を終え、

 院内の婦人科フロアへと足を運んでいた。

向かう先は──診察室。

 彼女が医師としてでなく、“患者”として座る、数少ない空間だ。

ドアをノックし、静かに入る。

「失礼します」

 朱音がカルテに目を通していた。

「お疲れさま、理名ちゃん。

 どうぞ。

 今日はこっちの椅子に座ってね」

「……ありがとうございます。

 朱音先生」

 岩崎先生ではなく、いつもと違う肩書きで呼ばれると、少し照れくさくなる。

白衣を脱いでハンガーに掛ける。

 近くのワゴンに、そっと脱いだ下着を軽く畳んで置いた。

 理名は無意識に、指先で小さく胸元を押さえる。

「今日は、どんな結果が出るだろう」

ベッドに横になりながら、目を閉じる。

 理名の手は自然とお腹へ伸びて、そっと撫でるように置かれていた。

朱音が優しく声をかける。

 「少しだけ、失礼するね。

 今日は内膜と卵胞のチェック。

 痛みはない?」

「……ううん、大丈夫」

 
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