君の隣
「……よく眠れた?」

「……眠れなかったよ」

「え?」

「あなたに……甘く名前を呼ばれて、何度も起こされたから」

そう言って、理名が顔を赤くしながら味噌汁を啜る。

「ごめん。

 でも、顔が少し柔らかくなってる」

「……ほぐしてくれたの、誰よ」

ふたりだけの朝ごはん。

 旅館の女将が丁寧に用意してくれた、地元野菜の煮物に焼き魚。

静かな朝の光が、部屋に差し込む。

「こんな朝、初めてかも。

 ふたりで……ゆっくり朝ごはん」

「理名と一緒なら、どんな朝でも特別だけど」

「……そういうの、さらっと言うの、ずるい」

「でも、嬉しそうな顔してる」

理名は笑いながら、拓実の湯呑みにお茶を注ぎ、
そっと自分の箸を重ねる。

「ねえ……今度は、秋にまた来よう。

 紅葉の時期に」

「……うん。
 また来よう。

 何度でも、ふたりで。
 その頃は、さんにんでも、俺は嬉しいよ」

「もうっ。
 甘いこと言うの、反則」

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